銀狐の住む街へ -手紙-【完】
あたかもその手紙の存在を以前から知っていたかのような言い方だ。


「亜月な、容態が悪化する前に、“もう自分は駄目かもしれないから真左ちゃんにお手紙書いておくね。お兄ちゃん、五年後の真左ちゃんに届くようにできる?”って言ってきたんだ。俺はそのとき、五年後の真左に送ったよ。この手紙」


……そうなの? 亜月がそんなこと言ってたなんて知らなかった。


「まあ、そういうことだ。もしかして、用事ってこれだけ?」


人を馬鹿にしたような笑みは昔から変わらない。小向のお兄さんは小向のお兄さんのままだった。


「うっ、うるさいのです。私はそんなこと知らなかったから来ただけで、知ってたら来ることなんて有り得なかったんですからね!!」

「はーいはい、わかったよ。まあいんじゃない? わかったんだし。もういい? 俺、忙しいんだよね」


そして、はっと気がつく。

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