猫の飼われ方
橋口 昌美
ある日のことだ。
両親が事故で亡くなってしまった、俺は天涯孤独というやつになった。

それだけでも不幸だったのだが、不幸には不幸が重なるもので、このタイミングで五年間音信不通の兄貴の借金が判明した。
両親は兄貴の借金の保証人にさせられたそうだが、とてもじゃないけれど、二人の保険金で賄える金額ではなかった。



馬鹿兄貴は闇金にも手を付けて行方をくらましたまま、全く連絡先もわからない。
俺は大学を中退して借金を返すべくバイトに明け暮れていた……が、


「橋口君、顔色悪いよ?」

居酒屋のバイトリーダーに心配される。


「大丈夫です。」

いや、大丈夫ではない。
ここを深夜1時まで働いて30分仮眠して、今度はコンビニの早朝のバイトの後、また30分仮眠、昼間は工場で働き、夜は土建でまた深夜まで居酒屋。

それを続けて二ヶ月経った。
ここ最近はずっと目眩がする。

手に力が入らない…………お盆から、注文のロックが零れた。


「橋口君!!」

アルバイトリーダーの声で、意識が飛んでゆく……


携帯のバイブが鳴りっぱなしだ、そういえば支払い今日だったっけ…………
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