猫の飼われ方
「お前、何してくれてんだよ!離せ!」

俺が痩せたせいか、それともあいつに意外と力があるせいか。部屋にあっという間に担がれた。


「中之島理一、だ。自分の主人の名前くらい把握しておけ。」

ベッドに放り込まれ、足を少し捻ってしまった……ここで弱みを見せたくないから口にはしない。
顎を持ち上げられ、顔を覗かれた。

「なんだ昌美、無駄口ばかりでまともな口もきけないのか?」

偉そうに……。
悔しいが、その色素の薄い瞳で見つめられると怯んでしまう。
顔はいいんだよな。


「中之島……さん……、離せ……いや、離してください。」


「やれば出来るじゃないか昌美。」

くしゃっと子供みたいに笑い頭を撫でてきたので、不意をつかれた。
俺のこと、マジでペットだと思ってんのかな……。


「……しかし、脱走はいけないな、躾をしないと。」

先程のとは打って変わり邪悪な微笑みで、そのままベッドに押し付けられた。


「やっ…………ン……」

唇が塞がり息の詰まる、嗅覚が鋭敏になって、中之島の香水が支配する。
躾とは、キスのことだったのか……知らなかった。

首筋から流れる指に意識を集中している間、舌が滑り込んでゆく。
簡単に蹂躙されるなんて……俺……腹が減って力が出ない…………。



グギュルルル……

腹が鳴り響いてる。


「昌美……、ご飯にしようか。」

空腹で首を縦に頷くことしか出来ない。
また子供みたいな笑顔に戻るし、実は二重人格じゃないか……。
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