光の先に…
ピシッ!
「な…っ?!」
かなりのスピードでレイムに向かっていた光が突然静止した。
レイムは相変わらずポーカーフェイスな表情を浮かべて明希達を見ている。
「そんなのが当たると思ったんすか?まだまだ弱いっすよ、リルダの娘さん」
レイムが軽く棒を振るように指を振った。
パシュンッ
光は一瞬にして後片もなく消えた。
「嘘…」
「こんなのってありえないわ…」
レクシスはこの魔法を攻撃呪文の頂点に立つものだと言っていた。
なのに、このレイムは蝋燭の炎を吹き消すくらい簡単に消してしまった。
呆然と立ち尽くす明希に、レイムはつかつかと歩み寄っていく。
「俺や兄貴はそこらのキメラとは違うんすよ。力を与えられた選ばれし者って呼ばれていてねぇ」
レイムはそう言いながら、ポケットに手を入れた。
そこから取り出したのは鋭利なサバイバルナイフだ。
二人は身構えた。
その様子をレイムがクスクスと笑う。
「そんなに睨んでも無駄だよ。君らの体はもう動かないから」
二人はハッとして、手足を動かそうとした。
だが、金縛りにあったかのように動かない。
その内にレイムが二人との距離を短めていく。
「この、くらい…っ」
レクシスが魔法を解く呪文を唱えようとした。
「馬鹿な人だなぁ。ヴォストロイム」
一気に地面がせり上がる。
二人の周りの地面がデコボコになり、へこんだ所から怪しい光が出てくる。
「ヴォストロイムは地を支配する魔法。俺が命令すれば、何体でもゴーレムを生み出し、水を垂らせば一気に洪水へと導く。互いの命が惜しければ動かないよーにしてほしいっすね」
レクシスが呪文を唱えるのをやめる。
レイムはそれを確認し、二ヤリと笑った。
「それでいいんっすよ」
動けない明希にナイフを向ける。
「な、何する気?!」
「心配しなくても今は殺さないから大丈夫」
レクシスの険しい表情とは真逆の顔をして、レイムは明希のネックレスを見た。
「へぇ、これがリルダの首飾りなんだぁ。欲しいけど、俺は触れないもんなぁ」
「え…?」
ピッ!
明希の手に痛みが走った。
「痛っ!」
ナイフが明希の手をかすった。