3つのナイトメアー
序章


                                       序章



 老人は、恐怖におののきながら、突然闖入してきた悪魔のような男の顔と


手元を、まざまざと見比べていた。冷たい汗がじっとりと背筋を流れる。


 男は、そんな老人の反応を楽しむかのように、くくっと嘲笑いながら、灯油


を浸して丸めた新聞紙に火をつけ、老人と同じように後ろ手に縛られている


老人の妻の顔に近寄せていった。老妻は、恐怖を通り越したうつろな目でそ


れを眺めている。


「やめろ~! 金は、本当にその机の金庫にあるだけだ。全部やるから、そ


れを持ってそのまま出て行ってくれ。あんたのことは誰にも言わない、約束


する。だから、どうか妻だけでも助けてやってくれ。頼む、お願いだ!」


 男は、ふふんと首を横に振った。老人の切なる命乞いの絶叫も、シャッタ


ーを下ろした店のコンクリートの四方の壁の中をむなしく                                                                 
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