3つのナイトメアー




 蝉の鳴く暑い夏休みなのに、恭子は東京を離れて母と一緒に父の故郷のE県


にいる。


 父が可南子と共に仕事をするようになってから一年、母は、正月以外にも恭


子を連れて度々帰省するようになったからだ。


 居間で遊びながら買い物に出た母を待っていた恭子の耳に、祖母、菊代お


ば、富美伯母達、大人の女三人のひそひそとした話し声が聞こえてきた。最初


は祖母のおろおろとした声だ。


「貴之もどうしたもんだろうね。なにも知らない恭子ちゃんが可哀想だよ」


 次はやや険のある富美伯母の声だ。大きな材木問屋の三男に嫁いだ富美伯母


は、いつも豪華なみなりをしていて居丈高で近寄りがたい印象だ。


「だったら、私の方こそ迷惑よ。可南子さんは主人の姪なんですからね。主人


の実家の長男夫婦は、娘の可南子さんを目に入れても痛
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