3つのナイトメアー
華代は、最初からどちらのグラスにも青酸カリなど入れてなかった。恭子の
恐怖におびえる顔がみたくて、嘘をついたのだ。自分の方が、さも毒を飲んだ
かのように苦しんでみせて恭子の反応をうかがった。昔から恭子は窮地に追い
込まれると、冷静さを失い、突飛な行動にでたものだ。圭のことも然りだ。華
代は、恭子が自ら墓穴を掘って事故にでも遭えばいいと願っていたが、命まで
とろうとは思ってなかった。しかし、こうして勝手に死んでいくのを見ても、
なんの憐れみも感じなかった。それほど、華代の恭子に対する怨念は深かっ
た。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
華代の狂人じみた哄笑は、暮れゆく夜の帷の中で絶え間なく続いた。
今にも崩れ落ちそうな古い雑貨店の中で、脚の一本取れかけた椅子に座った
老人が、ほ