3つのナイトメアー


「キャ~、泥棒よ、篤、警察を呼んで!」


 篤の通報で、ただちに刑事が二人、鑑識を伴いやってきた。四十歳くらいの


年輩の方の、彫が深くて色の浅黒い精悍な顔つきの刑事が、篤達親子に質問し


た。


「何か盗られたものはありますか?」


 小雪が、犯人によってバッグの中から乱暴に開かれたまま、床に投げ出され


た財布を指しながら、激しく捲し立てた。


「財布の中の現金だけがごっそりと抜き取られてて、後はそのままです」


「幾らくらいですか?」


「二十万円ほどですわ」


 刑事は、証拠写真を撮るために、母のバッグと財布を確認した。


「こちらですね? ほお、このマークはシャネルですか?」


「私、普段から身につける物はほとん
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