3つのナイトメアー
小雪は、おおげさに身をくねらせながら刑事に流し目をした。とうに四十歳
を過ぎているのに、ハンサムな男に見境なく媚を売る姿は、まるで盛りのつい
た雌猫のようだ。篤は目をそむけながら、しどけない格好のままの小雪に耳打
ちした。
「母さん、そのガウン、早く着替えろよ」
小雪が着替えている間に、刑事と入れ替わって鑑識がきた。手袋をはめたま
まで現金だけを速やかに盗み去った手口から、窃盗の常習犯とみられた。白い
粉を刷毛ではたいて、入念に足跡痕の証拠写真を撮った後の、鑑識から指示さ
れるまま、篤が盗難届を記入していると、先ほどの刑事が戻って来た。近所に
聞き込みに行っていたようで、着替えを終えた小雪と篤に状況を報告した。