3つのナイトメアー
でいたあの頃、オレは多忙さを口実に、一人息子のことは女房に任せっきりに
して、家族と向き合うのを避けてきた。あきらのいじめのことで相談を受けて
も、男がこれくらいのことを乗り越えられなくてどうすると、ろくに耳を貸さ
なかった。あきらを亡くして、初めてことの重大さを知り、激しく後悔した
が、すでに女房の心はオレから離れていた。あきらが出来て、早くに学生結婚
してから、ずっと連れ添ってきたのに、あっけないものだった。息子と女房を
同時に失ったオレは、絶望の淵に立たされた。だが、連日繰り返される凶悪事
件は、オレに嘆き悲しむ暇も与えなかった。オレは胸の内に怒りをくすぼらせ
たまま、任務に没頭した。何年も月日が流れ、とうとうあの日、斎藤家に盗難
事件が起こった。偶然、関わったオレは、女主人の顔を見るな