3つのナイトメアー


それが今ここにある手持ちの金全てだと言っても、全く聞く耳をもたない。そ


の表情は狂気に満ち、目はあらぬ方向をさまよっていた。


 恐怖に震える老人の目の前で、男はまるで虫けらでも殺すように、妻の足元


から火をつけた。老人は、最愛の妻が、なぶり殺されていくのを、まざまざと


見せつけられた後、自らをも地獄の業火に焼かれた。





 男への激しい憎悪のパワーは、行き場を失い怨念となって、老人は肉体が朽


ち果てた後も、魂はこの世に生き続けた。ただひたすら、妻ともう一度会いた


い、その体をこの手に抱きしめたいと叫びながら。




 そして、とうとう、老人は神の声を聞くことができた。


「欲深き人間の魂の代償によって得られる情念を三つあつめよ。そのパワーに


よって、再び妻は、お前の前に姿を蘇らせることができよう」
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