3つのナイトメアー
老人は、地獄の猛火の中で、妻の悲痛な叫びを聞いた。かっと見開いた老
人の目から一筋、血の涙が滲んだ。男は、老人のたぎるような憎しみさえ弄
ぶかのように、能面のように表情のない顔の口元だけで薄く笑った。炎はさ
らに広がり、とうとう老人の体をも覆いつくした。男は、燃えさかる憐れな
老夫妻を後に、平然と外に出て行った。その満足そうな表情は、完全に狂人
のものだった。
老妻の、小さく焼け焦げた亡骸は、やがて灰となり、魂は天へと昇ってい
った。
老人の魂は、無残に変わり果てた肉体を抜け出し、怨念となってこの世を
彷徨い続けた。