3つのナイトメアー
エゴイズム麻衣の章
エゴイズム 麻衣の章
それは、かつて人間だった様相が全く窺えないほど、変わり果てた惨たら
しい水死体だった。澱んだ暗い川の水の中に晒されたまま、丸一日、岩と岩
の間を彷徨った肉体からは、髪の毛はごっそりと抜け落ち、パンパンに膨ら
んだ顔の片方の眼球を露出させ、両手の指の爪の半分が抜け落ちた、少女の
骸。それは、あたしが前日に家を訪ねた律ちゃんだった。
律ちゃんは、大阪のN区から、あたしのいる公立中学に通う二年生の女の
子だった。お父さんが肝臓を悪くして亡くなってから、母子家庭で倹しく暮
らしてきた律ちゃんは、成績も中の下あたりで、いつもクラスメートから離
れて一人ぽつんと座っていた。陰の薄い陰気な顔立ちもあってか、皆に軽ん
じられて