3つのナイトメアー
いたようだった。律ちゃんには、年頃の少女らしい、溢れ出る生命力とか活
気といったものが、一切感じられなかった。あたしも、お父さんが亡くなっ
てから、お母さんと二人暮らしだったから、あたしたちは似たような環境に
育ったのだ。でも、負けず嫌いで向上心が人一倍強く、努力して勉強もスポ
ーツも万能だったあたしは、律ちゃんとは、光と影の対照的存在。だから、
あの不幸な事故が起きるまでは、私達は関わり合うこともなかったろうか
ら、運命とは皮肉なものだ。
あの不幸な出来事は、律ちゃんの担任である理科担当の若手女教師、遠藤
美咲先生の身に起こった。授業中、生徒を前に教壇で、美咲先生自ら、液体
化合物を混ぜ合わせて化学反応を試す実験を行っている最中、なにを誤って
か、それはいきなり爆発したのだった。フラスコは粉々に割れ、飛び散った
液体のもうもうと立つ煙の中で、顔を覆って転げ回った若く可憐な美咲先生
は、顔に酷い火傷を負った。