3つのナイトメアー


上げられたもんや。お前らさえおらなんだら自由なのにって、お決まりの文句


言ってな。うちは、そんな生活が嫌で、高校を卒業するなり十歳も年下の律子


を残して、一人で逃げたんや。電話を聞いて家にかけつける間中、ずっとそん


な自分を責めてた。


六年ぶりに帰った家で、無残に変貌した律子が、冷たくなって待ってた。母親


に、どうしてこんなことになったんかと詰め寄ると、その少し前から、律子は


ずっと家に引き籠っていて、心配して様子を見にきた先生と一緒に出掛けてい


った先の河川敷で、不幸な事故に遭ったと言うんや。雨続きで水量が増えてた


んが災いしたそうや。足を滑らせた律子は、あっという間に川の水にのみこま


れていって、先生はどうすることも出来んかったそうや。学校でも教育熱心で


評判のええ先生の証言やよって、警察が水難事故として処理したのも、母親は


納得済みやった。その時は、うちもあきらめて、また東京に戻った。自分の生


活が
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