3つのナイトメアー


震え始めた。


「どうして学校に来ないの? みんなも心配してるよ」


 あたしは、律ちゃんの痩せて貧相な肩を両手で押さえて、優しくなだめる


ように言った。


「少し外に出ようか? 風が気持ちいいよ。話したいことがあるんじゃない


の?」


 律ちゃんは、素直にあたしの後をついてきた。私達は、近くの大きな河川


敷を歩いた。菜種梅雨が続いたせいか、いつもより水嵩を増した川が、ごう


ごうと不穏な音を立てて流れている。これから律ちゃんの身に起こる悲惨な


運命の前触れのように。律ちゃんは、一人だけ川に落ちて、翌日、死体とな


って発見されたのだから。





 あれから、何度春を越してきたかしら? 長い月日と共に、恐ろしいあの


事故のことは、あたしの中で徐々に小さな記憶の一片として
< 7 / 208 >

この作品をシェア

pagetop