3つのナイトメアー
震え始めた。
「どうして学校に来ないの? みんなも心配してるよ」
あたしは、律ちゃんの痩せて貧相な肩を両手で押さえて、優しくなだめる
ように言った。
「少し外に出ようか? 風が気持ちいいよ。話したいことがあるんじゃない
の?」
律ちゃんは、素直にあたしの後をついてきた。私達は、近くの大きな河川
敷を歩いた。菜種梅雨が続いたせいか、いつもより水嵩を増した川が、ごう
ごうと不穏な音を立てて流れている。これから律ちゃんの身に起こる悲惨な
運命の前触れのように。律ちゃんは、一人だけ川に落ちて、翌日、死体とな
って発見されたのだから。
あれから、何度春を越してきたかしら? 長い月日と共に、恐ろしいあの
事故のことは、あたしの中で徐々に小さな記憶の一片として