3つのナイトメアー


薄汚れた壁と、囚人服のグレー一色で囲まれて、季節感なんかなかったもの。


豊かにおい茂った木々の緑、高く澄みきった空の青、すれ違う女の子達のカラ


フルなファッション、一歩踏み出すたびにくるくると変わる景色が、実際に目


で楽しめる開放感に、こんなにも暑い夏が、泣きたくなるくらい嬉しくって、


生きてるって実感が湧くわ。これが自由なのね。やっと、やっと、出られた!






 あの日、律子殺しと亜弓への殺人未遂で捕まったあたしは、精神鑑定にかけ


られたわ。心神喪失を装って罪を逃れようとしたけど、無理だったの。普段


は、立派な大人の良家の奥様で、英語も流暢にあやつれるインテリの常識人だ


ったのが災いしたのね。二重人格は、心身喪失とは全く別物なんですって。律


子を殺したのなんか、あたしにとっては大昔だったのに、時効が成立してなく


って、起訴されて裁判にかけられて、それから何年もの間、辛い懲役が待って


たわ。あたしは、今日のこ
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