3つのナイトメアー
家にたどり着いたわ。なかなか瀟洒で小綺麗なたたずまいから、パパの現在の
不自由ない暮らしぶりがうかがいえてよ。あたしが見込んだやり手のパパのこ
とですもの。きっと事業で挽回して、更にリッチになって、あたしを迎えてく
れると信じてたのよ。
これで、問題点の一つはクリアーしたわ。更に一番気になることを確かめる
ため、あたしは生唾をごくりと飲みこんでから、門の前を見据えたの。表札が
パパの名前だけになってる。ということは、亜弓は一緒じゃないのね! あん
な、計算高くて可愛げのない子ですもの。きっと、あたしのいないうちに、い
やしい本性がばれて、パパに追い出されたに違いないわ。もしかしたら死んで
たりして。どっちにしろ、なんてラッキーなの!
心のもやもやがすっきり晴れたあたしは、いそいそとチャイムを押したの。
「はい」
中から、懐かしいパパの、少しくぐもった声がして、玄関のノブを回す気配
がする。