3つのナイトメアー
「だから、払わないとは言ってないでしょう!」
怒りのあまり、あたしは手当たり次第乱暴に、ラックや陳列棚から、服やバ
ッグを摑みとって、自分の顔の前に持っていったわ。さっきまでの失礼なスタ
ッフは、まるで化け物でも見るかのように、思い切り顔を引きつらせて、責任
者を呼びに奥に行った。あたしは、お店のキラキラと輝く大きな鏡に向かっ
て、ニッコリとほほ笑んだの。
「ほおら、よく似合うでしょう?」
途端、あたしはヒィ~と、大きな悲鳴をあげてた。そこには、得体の知れな
い、六〇歳くらいのみすぼらしい老女が立ってた。着古した所々シミのついた
シャツと、流行遅れの中途半端なたきのフレアースカートのいでたちは貧乏く
さく、長年美容院とは無縁の、ボサボサ伸び放題の艶のない白髪だらけの髪に
被われた顔は、安物の化粧品では隠しきれない深い皺が刻まれていて、半端じ
ゃない荒み