3つのナイトメアー


クターで呼んでやるの。亜弓って。そう、あたしは、昔から家柄の良いお金


持ちの家に生まれただけでお高くとまっている、ヒロインのライバルの亜弓


が大嫌いだったの。パパにも、あたしの前ではあの子のことを亜弓って呼ば


せたわ。亜弓はね、パパとあたしとの生活の中に、いつの間にかそっと忍び


こんでたの。最初は、小さくて取るに足らない存在だったから、あたしも敢


えて気にしないように努めてたのよ。でも日常の中で、毎日毎日少しずつ嵩


を増していくようになった亜弓が、あたしとパパとの関係を脅かすんじゃな


いかって、怯えてたの。予感は的中してしまったわ。亜弓が来るまでは、あ


たしだけに愛情とお金をたっぷりと注ぎ込んでくれて、なんでもあたし中心


だったパパが、変わってしまったんだから。パパは、目障りでしかない亜弓


のことが可愛くて堪らないらしいの。


「この子は天使のように可愛いねえ。お前もそう思わないかい?」
 

あたしのことを、ずっと名前にちゃん付けで呼んでくれてたのが、亜弓が現


れるなり、
< 9 / 208 >

この作品をシェア

pagetop