3つのナイトメアー
古びた骨董店のランプの淡い灯の中で、すす茶けた顔色の老人が、ロッキン
グチェアーの揺れに身をまかせながら、ゆっくりとつぶやいた。
「皆さん、麻衣のおそろしく短絡的で自己中心的な女の性に、さぞかし呆れら
れたことでしょう。麻衣は、自分本位の身勝手な欲望を満たすため、同僚に深
い傷を負わせ、教師の身でありながら、何の罪もない教え子をその証拠隠滅の
ために殺害し、邪魔という理由だけで自身母親を手にかけ、挙句は我が子まで
殺そうとした、稀にみる鬼畜のような女です。最期は、自ら人生の幕を閉じる
という悲惨な末路でしたが、本能のおもむくまま罪を重ねてきた当然の報いと
いえるでしょう。究極のエゴイストだった麻衣は、自分だけを愛し守り貫きま
した。
エゴイズム、おお、なんという人間の本性を剥き出しにした、愚かでシニカ
ルなひびきなんでしょう!」