僕と天使が見つけたもの。

耳を刺すような鉄の音。
見上げれば、空が見えた。

「はぁ……はぁ、」

息が出来なくて、身体中が熱い。
涙が溢れて止まらない。風が身体を通り抜けた。

ぼんやりと映る人影。
それは段々鮮明になっていって……

「……だ、大丈夫です、か?」

美しい澄んだ声。
風になびくまっすぐな黒髪。
君は誰?
どうしてそんなに綺麗なの?もしかして

「…天使」

「え?」

迎えにきてくれたんですか?

「お願いだ、連れて行ってくれ!行きたいんだ!!!」

和沙の所に。

和沙に会いたいんだ。その背中から純白の翼を出して、僕を、連れて行って。

貴女ハ、天使ナンデショウ?

「な、なに言って……」

和沙に会いたい、会いたい、会いたい。
置いてきぼりにしないで。
僕は一人になりたくない。
君を一人にもしたくない。

「おねがいだ……」

力を入れて振りほどこうとしたその腕を、強く強く掴んだ。

「ねぇ、しっかりし……っ!」

どうして、和沙だったんだ。
僕を選べばよかったじゃないか。
僕の代わりはいくらでもいるけど、僕の隣にいてくれた和沙の代わりなんているはずがない。

「……んで、だよぉ…!」

どうして役立たずの僕が此処にいて、

和沙がいないんだよ。

「………あなたも、なんだね」

どうして、どうして、
どうして涙が落ちる。
悲しくて悔しくて苦しくて。自分が憎い。
「なんで、和沙……なんでっ」

頭が痛い。胸が苦しくて、
ぐらぐらして、恐い。
ぐるぐるして、キモチワルイ。

「…か、ず…さ………」

闇が迫って、飲み込まれる。その時、空と一緒に見えた天使の顔は泣いているように見えた。



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