僕と天使が見つけたもの。
重たい瞼をうっすら開くと、白い光に何かの影がぼんやりと映る。
深く息を吸い込むと消毒液の匂いがした。


「………ん、」

此処は、どこだろう?

「…大丈夫?」

起き上がってみると、そこは一度だけ来たことがある学校の保健室だった。
窓の外は薄暗くなっている。

養護教諭の月影先生が、持っていたコーヒーカップを置いて僕が寝ているベッドの方まで来てくれた。

「僕…どのくらい寝てたんですか?」

「二時間くらいだよ。あー、汗かいてる。予備のワイシャツあるから着替えなさい」

「はい……」

「友達すっごい心配してたよ。帰ってもらうの大変だった」

苦労したのか苦笑いを浮かべながらも、月影先生はアイロンがかかったワイシャツを差し出してくれる。


じっとりと濡れてしまったワイシャツを脱ぎながら周りを見渡すと、テーブルの上に空になったコーヒーカップが二つ、置き去りになっていた。

校舎内は静かで、最上階で練習をしている吹奏楽部の合奏だけが聴こえる。

「ああ、今日は俺が車で送るって家にも連絡入れてし。大丈夫だから」

「はい…ありがとうございます」
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