シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
あたしが"決断"するまで、もしかしてあと3時間、時間切れになるまで…ここで櫂を嬲り続ける気かも知れない。
目的地目の前に、行き着くことも出来ないのは屈辱。
あと3時間、攻撃を凌げずタイムオーバーなんて…櫂の矜持は傷つく。
もう…櫂と久涅の力の差は歴然なのかも知れない。
認めたくはないけれど…だけど、櫂と玲くんが束になってもあれだけの余裕で、紫堂の力まで無効化され、更に周涅まで久涅側にいるのなら、此処で対戦している分だけ時間の浪費。
闘わずに目的地に行ける知恵がなければ、きっと勝つことが出来ない。
そう、頭で考えねば…櫂は勝てない。
だけど今、櫂にはそんな余裕はなく。
こんなに早く久涅が現われるなんて、誰も予想していなかったから。
周涅にしか警戒していなかったから。
櫂も玲くんも…今の戦闘で頭が一杯のはずだ。
だとしたら、考えるべき人間は…闘わずにいる側の人間で。
つまり、それはあたししか出来ないこと。
今の逆境を打開する為には、それしかないのだと…久涅はわざわざそれを見せつけ、視線で促した。
櫂の身体だけではなく、『気高き獅子』としての矜持まで破壊させて…櫂に何も残らなくなるまで、少しずつ奪いながら、じわじわじわじわ攻撃しているのを、見ていられるのならそこで黙っていろと言ってきた。
何であたし?
大いなる疑問は湧くけれど、幸いにもあたしにその採択権があるというのなら…目一杯行使してあげる。
「久涅!!!!」
だから――
「取引しよう!!!」
受けてやる。