シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
煌はまだ帰ってこない。
櫂が目的地についたとしても…煌が成功して帰ってこない限りは、勝つことが出来ない。
煌が要となる。
そう…このままでは、久涅にそのことを感付かれてしまったら…煌まで危険に晒される。
あたしは、煌も守らなきゃいけないの。
だったらさ…久涅。
全てはあんたの思惑通りにコトは運んでるかも知れないけれど…今度はあたしと勝負しようよ。
あんたか気づくか、あたしが隠し通せるか。
あたし、守られてばかりの女じゃないの。
癪だけれど…
乗ってやるわよ!!!
「ほう? お前如き女が俺の元に来て、何をする?」
下卑た笑い。
櫂が必死にあたしの名前を呼んでいる。
「何でもするわよ、あんたの望むことは!!!」
あたしは櫂を無視して、久涅を睨み付けながら吐き捨てた。
「俺の…玩具になるのか?」
やっぱり、最低男の考えは最低だわ。
だけど仕方が無いね。
櫂を守る為ならそれくらい…
「いいわ、なる「駄目だッッッ!!!」
掠れた声で叫んだのは玲くんで、玲くんはあたしの腕を掴んだ。
「駄目だ。絶対、駄目だ、芹霞。離れるな、僕から離れるんじゃない!!!」
それは悲痛に歪んだ顔で。
あたしの腕は、握力で捻り落とされそうに痛い。
それでもあたしは毅然と、玲くんを見つめた。
「玲くん…お願い。判って」
「判りたくないッッ!!! 嫌だから。絶対させやしない!!!」
あたしは微笑んで…そして真顔になった。
「玲くん。玲くんを迎えに行った櫂と煌の想いを無駄にしないで。こんなことで時間を潰して時間切れで終わらせる為に、皆で玲くんを迎えに行ったわけじゃない。玲くんだって、何の為に危険を冒したの? 聡い玲くんなら…今の状況、判るよね」
玲くんは、苦しそうに目を細め、ぎゅっと唇を噛み締めた。