シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「芹霞。大丈夫だ」


櫂は微笑んで、横に立つ。


「俺は大丈夫だから…な? 俺と共に居ろ」


手を差し出した。


久涅への言葉を取り消して、自分の元に来いということなんだろう。


あたしは頭を横に振る。


「無理。櫂…判ってるはずだよ。玲くんも。

今の状況は…悪くしかならない。少しでも良くする為には、相手の出したどんな条件にも乗らないといけない。希望の見える選択肢を拒否する余裕は、もうないんだよ。


あたし達は、ずっと――

こういう状況になるように追い込まれていたんだ」



「へえ…中々鋭いんだね、君~」


「お黙り、赤銅!!!!」


あたしは周涅を睨み付けて、また櫂に向き直る。


「今、一番大切なのは櫂が横須賀に行くこと。あたしのことは二の次なの。皆で守らなきゃいけないものは櫂であって、あたしじゃない。優先順位を間違えないで」


「……違う、違う芹霞ッッ!!!」


櫂が飛び出し、あたしの腕を掴んだ。


「俺は――」


駄目だ。


櫂は何が何でも反対して、あたしの意見を潰す気だ。


そんなんじゃ駄目だ。


更に時間の無駄だ。


だからあたしは――


「黙りなさいッッ!!!」


櫂の頬を平手打ちをしたんだ。

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