シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「ふうん…ワンちゃん、犠牲になったんだ。じゃあ…あの肉体が死ぬのも、時間の問題か。何か…頑張って痛いの堪えてたのに、呆気ないねえ」


周涅は…紫茉ちゃんが来ていたことを知らないらしい。

きっと…紫茉ちゃんなしでは、煌は肉体に帰れない状態なのだろう。

かつての玲くんのように、おかしな世界を流離う羽目になるのだろう。


紫茉ちゃん、ありがとう!!!


久涅はじっとあたしを見ていて。


「邪魔だ…。死に損ないなら、今すぐ殺してすっきりさせればいい」


汗が噴き出そうになるのを、じっと堪えてあたしは続けた。


「あ、あたしがあんなデカイの背負って逃げ出すこと出来るわけないでしょう!!? 煌だって櫂が助かることを願って頑張っていたの!!! せめて最終結果ぐらい…煌も一緒に居させてよ!!! いいでしょ、意識は何処かにいっちゃってるんだよ!!? 身体だけで何が出来ると思ってるの!!!」


久涅は暫くあたしを見ながら考え込む。


まるで櫂が凍てついた眼差しをするように…心臓に悪い。


ひいいいっ。


「久涅ちゃん。女の子に優しくしてあげようよ。幾ら不安愁訴でも…大事にならないって。…"あいつ"だって動いていることだしさ」


何とも意味あり気な…物騒なことをのたまいながら、周涅のひと言により、久涅は渋々了承した。


「では。0時になるまでだ。0時と同時に、その屍体は捨てる」



煌…。


ごめん。


"屍体"なんて縁起でもないこと、させてごめん。


ちゃんと生きて帰って元気になるんだよ?


きっと…久涅と周涅は、煌の回復力を知らないはずだから。


時間が経てば経つほど、普通通り煌の身体が衰弱すると考えているだろうけれど…あたしは煌が回復すると信じていたい。


これで…煌の身体の安全は、0時までは保証された。


あたしが傍で見張っている限り、秘密裏に葬られたということもないはずで。


後は…あたしが久涅と行って、煌の帰還を待てばいいだけ。
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