シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「駄目ですッッ!!! どんな目に遭わされるか判らないのに!!!
3時間は…長すぎますッッッ!!!」
半狂乱のように声を上げていたんだ。
いつも静かで傍観者に徹する桜ちゃんが、こんなに髪を振り乱して、目ぎらぎらさせて声を荒げたのは初めて見る。
そして続けて口を開こうとした時、胸を押さえて前傾姿勢になった。
「葉山!!! 大声出すんじゃないよッッ!! 結界の中とはいえ…完治してないんだから!!!」
「ははは~。肋骨3本だからね~。器官に突き刺さってるかもね~。結界は傷を治癒しても…痛みは抑えないからね~」
肋骨3本!!?
突然はっとしたような顔をした桜ちゃんは…ポケットから小瓶を取り出し、中から錠剤を取り出すと、口に放り込んだ。
「……へえ? 販売中止にしたのによく持っているね? こんな時にそれ出すなんて…判っているんだ、その効果…」
口調が剣呑さを秘めたように感じたのは…気のせいだろうか。
販売中止に…した?
桜ちゃんは何を飲んだのだろう。
此処からだと、あのラベル…"ジキヨクナール"のもののように見えたけど…ありえないよね、風邪薬を飲むなんて。
「葉山~!!!?」
多分、桜ちゃんの声で目覚めたのだろう小猿くんが飛んで来た。
「何でこんなに人が増えてる!!?」
状況を飲み込めるまでパニックに陥っていたみたいだったけれど、櫂の姿を見て何とか把握出来たようだ。
だけど煌の身体を見て、堅い顔をしている。
「ワンコに何か…あ、それより、葉山!!? 骨…折れてるん「櫂様、玲様。駄目です、絶対駄目ですッッ!!! 芹霞さんを渡さないで下さいッッ!!! 久涅は…芹霞さんに何をするか判りませんッッ!!!」
小猿くんの言葉も支えの手も振り払い、桜ちゃんは激しく久涅を睨み付けて叫んだ。
対する久涅の顔は…無表情で、何を考えているかは判らない。