シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――芹霞ちゃあああん!!
何処で昔の櫂の声が泣き叫ぶ。
これは幻聴。
櫂は目の前に居る。
「芹霞さんを、芹霞さんを危険な目に会わせたいんですかッ!!?」
桜ちゃんが、櫂と玲くんに意見するような口調になるのは、珍しいことで。
ありがたいけれど…今、彼らを惑わさないで欲しい。
「桜。此処は…耐えよう」
玲くんが、宥(なだ)めるように静かに言った。
ああ、玲くんは…判ってくれたんだ。
「玲様、何でそんなに落ち着いていられるんですかッッ!!! 芹霞さんが…芹霞さんがッッ!!! 玲様は芹霞さんがどんな目に会っても平気なんで…」
「桜ッッッ!!
黙れッッッ!!!」
玲くんの恫喝で、桜ちゃんはびくりとして押し黙った。
玲くんは納得したのではなく…我慢しているのだということに、あたしは気づく。
ああ、我慢させたくないと…あの世界から皆で誓いながら帰ってきたばかりだというのに、最早こんな有様で。
ああ、玲くんは、何処までも優しくて。
玲くんの優しさに甘えるしか術のないあたしは、泣けてくる。
「ありがとう玲くん…少しでも、桜ちゃんの治療をお願いね。そして…」
あたしの言葉を最後まで聞かずして、玲くんは微笑んだ。
切なくなるような…今にも泣き出しそうな顔で。
「判っているよ。櫂を…ちゃんと連れるから。
君の想いを無駄に…しない」
玲くんの言葉尻が、泣いているように震えて…あたしは胸が痛くなった。