シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「…"お出かけ"、僕…諦めてないからね?」



優しい玲くんに、こんな顔をさせてしまうことが苦しくて堪らない。


こんな時に何で"お出かけ"という単語が出るのか判らなかったけれど…ひどく懐かしく、心が温まる気がした。


あの日常に帰りたい。


憂いなく…このまま時が過ぎてくれたら。


だけど…今、あたしが久涅の元に行かねば、"お出かけ"はおろか、その笑顔を見ることも叶わなくなるかも知れない。


我慢させてしまってごめんね、玲くん。


あたしの意見を通してくれて、ありがとう。


大好きだよ。


また会おうね。


その時は、きっと…いつも通りの、日常に戻っているはずだから。


"お出かけ"しようね…?



だからそれまで――



「櫂をよろしくお願いします!!!」



あたしは、皆に頭を下げた。




「…芹霞」


櫂があたしを見る。



憂いの含んだ切れ長の目。

通った鼻筋。


漆黒色で覆われた、あたしの大好きな大好きな幼馴染。



どくん。


心臓が揺れたのは…何でだったのか。


"行かないで"


そう叫び出したくなるのは、何故なのか。



あたしは――笑った。



「櫂、またね!!!」


両手で元気よく手を振ると、



「ああ――またな?」



櫂は泣きそうな顔をして笑った。



そして――

皆を促し、あたしに背を向けたんだ。

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