シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――芹霞ちゃあああん!!
何処で昔の櫂の声が泣き叫ぶ。
これは幻聴。
櫂は目の前に居る。
その櫂は、今あたしから離れていくんだ。
行ってしまう…。
離れてしまう…。
それは寂寥感とはまた違う、能動的な悲しみ。
かつての櫂のように、行かないでと駄々をこねたいあたしがいる。
あたしから、突き放したのにね。
今を犠牲にして、あたしは明るい未来を選んだんだ。
しっかりしろ。
今からそんなんでどうするんだ。
両頬を手でぱんぱんと叩いて、気を引き締めると、隣に見える…櫂の色を持った男が、嘲り笑うかのように…言った。
「判っているか、小娘。今はただ、見逃しただけ。最終結果は変わらない。お前は…櫂の元には帰れない」
久涅の笑い声が聞こえるけれど、あたしは返事をしなかった。
そうであるのが理(ことわり)とでもいうように、やけに自信満々に言うけれど…
見てなさい。
最後に笑うのはあたし達。
あたしは絶対、櫂の元に帰ってやる!!!
櫂は負けない。
絶対負けるもんか!!!