シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
まるでラジオのように、小猿くんと周涅の声が聞こえてくる。
「翠くんはどうするの? 行きたいのなら行けば? 周涅ちゃんは止めないよ?」
「お前が…すんなり行かせるということがひっかかる。何を考えている!!?」
「考えてないってば!!! 葉山ちゃんが心配で着いて行きたいのなら行けば? だけど自己責任でね。君の行動に、皇城家は責任持たないよ?」
「俺は…残る。お前の出方が信用ならない。ワンコにも芹霞にも手出しさせないぞ」
「ああ、周涅ちゃんは信用されてないのね、ああ悲しい。しくしくしく…。まあ…好きにすれば?」
周涅が何を考えているのかは分からないけれど、正直…少なくても煌が目覚めるまでの間、近くにいて貰えるのは嬉しい気がする。
小猿くんは…信用できるから。
皆の姿が小さくなる。
あたしは――
ずっとずっと…櫂の背中を見送った。
8年前までは、小さかった背中が…今はあんなに大きくなったんだね。
なんだか櫂に関するすべてのものが、感慨深げで。
酷く心に染み入ってしまう。
どうか櫂が勝ちますようにと、心で祈った。
逆転劇を、強く心に刻み付けた。
その時。
ふと――櫂の動きが止まった。
あたしに背中を向けたまま、微動だにしなくなって。
訝る皆の視線を浴びながら、それでも櫂は動かない。
何なんだろう?
どうしたんだろう?
そして櫂は…
突如またこちらに走り戻り、
あたしの腕を掴んだんだ。
「芹霞!!!」
あたしは櫂に、引き寄せられて、
「!!!」
あたしの唇に、櫂の唇が重ねられた。