シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
堪えきれないというような…まるで塞き止めていた何かを開放させるように、噛み付くように…どこまでも荒く、櫂は口付けてくる。
…繊細に震える…櫂の身体がよく判った。
――芹霞ちゃあああん!!!
まるで屋上での場面を彷彿させた。
あの時、あたしは…絶対離れないと言ったのに。
あたしを信じろと言ったのに。
今――あたしは、離れようとしているんだね。
痛いくらいの抱擁が、櫂の悲痛な心を伝えている。
それでも伝え足りないというように…
唇を離した櫂は、言った。
「……離したくない」
何処までも深い…こんな悲しみで翳った端正な顔を見ていたら、幾らなんでも平気ではいられなくて…目頭が急激に熱くなって、崩れ落ちそうになる。
こんなに真剣で、潤んだ目を見ていたら…絆されそうになる。
――芹霞ちゃあああん!!
8年前以上に、離したくないと思っている現実を、認識させられる。
「芹霞…まだ、別れたくない…」
声にもならないような、切ない…細い声に。
あたしは胸が張り裂けそうになる。
あたしは――。
だけど――
ザザッ…。
久涅が…苛立ったように一歩近付いたのが判ったから。
あたしは…櫂の身体を両手でとんと押しやった。