シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
――まだ、別れたくない…。


"まだ"


それに不吉なものを感じたけれど、振り切るようにあたしは笑う。



「あたし、待ってるから!!!」




「芹霞…」



「がんばれ!!! 『気高き獅子』!!!」



どうして…そんなに不安そうな顔をするのかな。


あたしの方が不安になっちゃうじゃない。


まるで…この選択が間違っているかのような。


もう櫂に…触れることすら出来なくなってしまうような。


ありえない。


そう、全ては徒労に終わることだから。



何かを訴えかける切れ長の目は…あまりに悲愴で。


これから勝ちに行くとは思えない、弱気の姿勢で。



「櫂!!! ファイトッッッ!!!」


あたしの目から、一筋の涙が零れた。


それを見た櫂の顔が更に歪んだ。


「負けないで!!!」


あたしは目を擦りながら、櫂を励まし続けた。


櫂は眉間に皺を寄せて目を瞑り、天井を振り仰ぐようにしてあたしの声を聞いていた。



何を――思っているのだろう。



もう言葉では言い表せないほど、あたしは櫂に対して切なくなって。


気弱な櫂の心が伝染したように、離れることに不安になっていくから。


だから――。


あたしは…紫茉ちゃんから借りていた、服の裾を手で引き裂いた。
< 1,014 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop