シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――まだ、別れたくない…。
"まだ"
それに不吉なものを感じたけれど、振り切るようにあたしは笑う。
「あたし、待ってるから!!!」
「芹霞…」
「がんばれ!!! 『気高き獅子』!!!」
どうして…そんなに不安そうな顔をするのかな。
あたしの方が不安になっちゃうじゃない。
まるで…この選択が間違っているかのような。
もう櫂に…触れることすら出来なくなってしまうような。
ありえない。
そう、全ては徒労に終わることだから。
何かを訴えかける切れ長の目は…あまりに悲愴で。
これから勝ちに行くとは思えない、弱気の姿勢で。
「櫂!!! ファイトッッッ!!!」
あたしの目から、一筋の涙が零れた。
それを見た櫂の顔が更に歪んだ。
「負けないで!!!」
あたしは目を擦りながら、櫂を励まし続けた。
櫂は眉間に皺を寄せて目を瞑り、天井を振り仰ぐようにしてあたしの声を聞いていた。
何を――思っているのだろう。
もう言葉では言い表せないほど、あたしは櫂に対して切なくなって。
気弱な櫂の心が伝染したように、離れることに不安になっていくから。
だから――。
あたしは…紫茉ちゃんから借りていた、服の裾を手で引き裂いた。