シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「力は…有効か。ならば…。

芹霞。位置を言え!!

俺の目となれッッ!!」


不敵に笑う櫂様に、芹霞さんは力強く頷いた。


「了解。まずここから右30度くらい、携帯の広告のある看板の前にいる女の子に、数匹」


芹霞さんの示す方向に、緑の光が敵を求めて伸びて行く。


それは風という元素を完全に支配下において、完璧に制御出来る櫂様だからこそ出来る技で。


人波掻き分けて特定の対象だけを狙えるのは、流石と言えた。


つけ刃の煌が"火"の力を使えば、対象外まで盛大に燃えることだろう。


それは本人も判っているらしく、


「俺…最近緋狭姉と力を制御する鍛錬始めてるけど、櫂にはまるで及ばねえや。はあ…。きっと玲なんかもさらりと出来るんだろうな」


羨望の眼差しを向けている。


「櫂、今度は後方!!! あの眼鏡かけた女の子に向かってる。風の力であっちお願い!!」


元気を取り戻した芹霞さんの声に反応したのは、少年。


ようやく、特定出来たらしい風の力の主は、彼の後方にずっといたとは皮肉なものだ。だが私にはそれを教えてやる義理はない。


「"櫂”? "力"?

…あああ!!?

その顔…紫堂櫂!!!?

何でお前が此処にいるんだ!!?」


怪訝に満ちた顔つきで振り向いた少年が、櫂様を見るなり…指をさしてそう叫び、同時に大袈裟すぎる程激しく、その身を震撼させた。


それは、驚きと…怒り?


「そうか…。此処で遭ったが100年目…」


途端――

少年の気の力が高まった。


それまでの…素人より若干強め程度であった潜在能力が、明らかに…警護団員並には急上昇したのだ。


「!!!」


流石の櫂様も、怪訝に目を細めて。


上がる。


少年の戦闘能力が上がる。


警戒した私の手が動く。

同時に煌の顔も強張る。


何だ――この少年は。


しかし彼を宥(なだ)めたのは、


「抑えろ、翠!!!」


シマと呼ばれた少女で。




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