シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「大丈夫だ。俺の闇石にはたっぷりと…十分過ぎる程の闇の力を充填しているし、こんな風の力の行使如きで、俺はびくつかん」
潮の香りがする。
皇城本家は鎌倉にあるはずだから…相模湾に近いせいか。
潮が鉄の…真紅色の匂いを運んでくる。
真紅色…。
俺の心は締め付けられる。
自ずと…手首に巻かれた布の切れ端に唇を寄せる俺が居る。
真紅色模様が見える切れ端が…芹霞だというのなら。
何とも不吉な気がして…不安で仕方が無くなったんだ。
――芹霞ちゃあああん!!!
あの時の絶望が思い返され、俺はぎゅっと目を瞑って振り切った。
俺の存在意味。
あの時から、俺の使命は決まったんだ。
愛する女を、命を賭けて守ること。
ああ…
それなのに、何で俺は守られる?
2ヶ月前。
東京での出来事が思い出されて。
目の前で真紅色に染まった芹霞が思い出されて。
俺の…闇石が取り出されて…。
連なる真紅色の随想に、寒気がした。
だけど。
真紅色こそが、俺達を強く結びつけているのは真実。
俺の守護石…血染め石(ブラッドストーン)。
闇を生み出す…奇跡の石。
8年前――
芹霞の為に手に入れた闇の力で、俺は必死に芹霞を繋ぎ止め…
そして現在――
この石に多くの闇の力は溢れども、守るべき芹霞を失い。
ああ、失ってはいない。
預けただけだ。
永遠の別離じゃないと、そう信じるしかなかった。
どんなに…嫌な予感がしても。