シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「師匠!!! 師匠も…葉山を結界で治療しながら、そんなバリバリ力放出してたら、心臓が持たないぞ!!? 暴走はしないでくれよ?」
遠坂が玲を窘(たしな)めると、玲は苦笑した。
「桜の治療なんて微々たるものさ。今まで十分過ぎる程の電磁波を、月長石に溜めていたおかげで…僕の体力は大丈夫。逆に我慢している方が…やりきれない。少し、爆発させてくれよ」
爆発させて欲しいといいながら、既に玲の力は爆発しているように思える。
あの場を去らねばならぬ耐え難き苦痛を、受けていたのは玲も同じ。
どんなに芹霞を連れたかったろう。
どんなに心を痛めただろう。
涼やかな端麗な顔からは読み取れぬ苛立ちが、玲の力となって発露され…青光が荒れ狂っている。
だがどんなことをしても、玲の動きは滑らかで流麗で。
気品を失わないのは…玲の気質なのだろう。
生まれながらの優雅さに恵まれた玲は、いつでも見惚れる程の動きを見せる。
同じ血を持つ俺にはない……優艶な空気は、正直羨ましいものだ。
ふと…思うんだ。
抑圧された"玲"でさえ、荒々しい動きの中にも…気品はあった。
もしこの先、玲が…そうした品格を全て壊してしまったら。
もしも剥き出しの…粗暴で野生的な面を見せたら。
どうなるのだろう。
玲を壊したいわけではないけれど、そうした…本能的な玲を見てみたい気もした。