シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「なあ葉山。君の"櫂様"と"玲様"は本当に凄いね。2人揃えば、怖いモノなしだ。見てご覧よ、敵さんが逃げ腰だ。こんなに敵蹴散らして、足止めることなく…こんなにさっさと移動出来ているのは、君のご主人達くらいのものじゃないか?」
遠坂が笑いながら、玲の肩の上に担がれたままの桜に声をかけると、
「はい!!! 櫂様と玲様は最強です」
大きい目をくりくりと動かして断言する桜に、俺は苦笑した。
「その最強の奴らは"逃げて"いるんだがな」
すると桜が首を振った。
「これから、敵陣へ切り込みに…攻撃にいくんです!!!」
俺と玲は顔を見合わせて笑った。
「桜も居れば、更に最強になるな」
そう俺が言うと、
「そうそう。早く煌も戻ってきて、最強メンバーで行きたいね」
無論、その時は芹霞も交えて。
「もう…大分よくなりました。もう…歩けます」
桜が降り立とうとする気配を見せた。
「はあ!!? 葉山、君肋骨ポッキンなんだぞ!!? 先刻まで蹲って熱出していたというのに、そんな急激に歩けるようになる訳……えええ!!? 何で!!? 熱も引いてるじゃないか!!!」
遠坂が派手に反応を向けた。
地に足をつけた桜が飛び跳ねていたからだ。
「そんなに師匠の回復って凄いのか?」
遠坂が俺に聞いてくる。
「俺を含めて紫堂の中では断トツだろうな。だけど…確かに早すぎる」
「ねえ…桜。お前、何か…飲んでたよね。あれ、何?」
玲の質問に、桜は黙ってポケットから小瓶を取り出した。
「"ジキヨクナール"。葉山、それ風邪薬じゃないか!!!」
桜はこくりと頷いた。