シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「これ、市販薬で…Zodiacのせいか有名なものだよね。販売中止してたっけか?」


「…聞いたこと無いな。例えば薬害がどうのとかいう噂は、ネットでも飛んでいなかったし」


どういうことだ?


何で風邪薬と、周涅が関係ある?


それの効果とは何だ?



――そんな時。



「……ふう。横須賀線に乗れれば、30分くらいで逗子経由で横須賀に出れるとか思ったけれど…そう甘くはなかったね」


玲が1点を指差した。


遙か向こう。


そこには、横倒しになっている長い物体があって。


「線路の上で妨害か。この感じでは…線路自体も、切断されているかも知れないな、電車が走らぬよう…」


「……ああ。この時間ならバスも来ないだろうし、タクシーはおろか…車の影もない。0時まであと2時間あまり。深夜でもないのに…敵以外の存在がないのは奇妙すぎるな」


「そうだね。きっと…突然の"工事中につき迂回"看板が出ているとか、或いは警察による通行止めとか、タクシー会社にも既に手回しされているのかもしれない」


そうこれは――


「やけに周涅が簡単に逃してくれたと思ったけれど、多分…敵だけではなく、通行手段も断絶させていたんだね」


これは、周涅が仕掛けた罠。


或いは久涅か。


あの感じであれば、2人は旧知の仲だったのだろう。


いつからの付き合いだ?


俺には、紫堂と皇城が結びついていたという事実が信じられない程で。


結局は――

俺は紫堂というものをよく判っていなかっただけなのかもしれない。


久涅が次期当主の時に知り合ったのか、

剥奪されてから知り合ったのかは判らないけれど。


俺は…紫堂の何を見てきたのだろう。

親父は、知っていたのだろうか。
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