シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

確かに、皆は…危険を承知で僕を助けに来てくれた。

僕を見捨てず…来てくれた。


どんなに感謝してもしきれぬ程、それは見捨てられて生きてきた僕にとっては、歓喜するべきことであったのは確か。


――俺は、玲を見捨てない。


今まで以上に、櫂に対する忠誠心が高まったのは確か。


"僕"の汚い面を見ても、それでも僕を信じ続けてくれる可愛い大好きな従弟を、僕はどんなことをしても守り続けたいと更に固く心に誓っていたのは確か。


だけど、それとはまた違う次元で、僕は芹霞を愛している。

置いておけるはずがなかった。


その僕が押し黙って引いたのは――


芹霞の、櫂に対する想いが強いことを感じたから。


それは今にこしたことではないけれど、取り乱した櫂の頬を…皆の前で叩いてまで、櫂を勝たせようとする芹霞の想いの強さに、僕は打ちひしがれた。


今まで誰よりも櫂を尊重し、櫂の矜持を守り続けようとした芹霞が、皆の前で櫂を叩いたのは…それだけの覚悟が芹霞にはあったんだ。


もし僕であっても、芹霞は我が身を犠牲にしてくれたかもしれない。


だけど笑う芹霞の中に、垣間見える…"女"の顔に。


ああ、僕は張り裂けそうな胸を押さえて。


僕になら、そんな顔をしてくれるだろうか。

僕も、そんな顔をさせたい。


僕の頭は欲望と悲しみとでぐちゃぐちゃだった。


決断をしたのは櫂。

芹霞の想いを受け取ったのは櫂。


桜に怒鳴って口を噤(つぐ)ませたのも、そうした悲哀による苛立ちによるものだった。


そう、たかが3時間。


芹霞を奪い返せばいいだけだと。


いつもの如く自分の心を押さえつけて出て行こうとした。

煌がいるという安心もあった。


必ず煌は来る。

必ず。


だから、耐えろ。

此処は櫂の為に耐えろ。


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