シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


自分の醜さは嫌と言うほど判っている。


だけど、育ってしまった芹霞への想いは、消えてくれないんだ。


芹霞への想いに関しては、8年前のように負けたくはないんだ。


どうしても!!!


次期当主という地位を横から奪ってでも、芹霞を手に入れたい僕が居て。


そこまで育った僕の心を、判って貰いたい僕がいて。


誰にも遠慮することなく、芹霞を手に入れたくて仕方が無い僕がいる。


肉体と意識が分離し、そして結合したせいなのか…今まで以上に、顕著に芹霞が欲しいんだ。


我武者羅に、芹霞が欲しい。


見せつけられるのが、溜まらなくきつい。


僕の心を見たなら、芹霞をくれよと言い出したい僕がいる。


こんな時に。

櫂が一番大変な時に。


芹霞をかっさらって、別の次元で2人で過ごしたい僕がいる。


櫂の手首で揺れる赤い布を奪って、自分の手首につけたい僕がいる。


こんな時に。


――約束、して欲しい。


なあ…櫂。


あの切り札は…有効なのか?


かつて唾棄したその案に、心が動いている"僕"がいて。

そんな"僕"を蔑む僕もいて。



その狭間で、呼吸をするのが苦しい。



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