シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
もし……。
もし叶うことならば――。
「大丈夫か、玲」
そんな僕にいち早く気づくもやはり櫂で。
僕は櫂を嫌うことは出来なくて。
櫂が…久涅のように嫌な奴なら、よかったのに。
「大丈夫」
だから僕は微笑むんだ。
そして…堂々巡り。
どちらかが此の世から消えるまで、この苦しい想いは続くんだろうか。
気が遠くなる心地だった。
「葉山!!! そんなに動くな…ああ、葉山~!!!」
由香ちゃんの声に振り返れば、桜が闘っていた。
桜の裂岩糸は煌に預けてしまってないらしいけれど、糸がなくとも桜は桜。
糸という武器はあくまで桜の副産物にしか過ぎず、そして緋狭さんからも…糸に頼らない稽古をつけられてきたようだ。
元々敏捷性に優れた桜だから、武器がなくなっても何ら遜色はない。
ただ――
元気ぶって表情を変えないようにはしているものの、桜の怪我は完全に治癒しているわけではなく、痛みに姿勢が崩れることも多々あった。
それでも、櫂を守りたい。
その気迫は凄まじく。
何よりあんなに声を荒げてまでも、芹霞を久涅に渡すことを拒んだ桜としては、芹霞の犠牲に報いるために、何が何でも櫂を守り通す気でいるのだろう。