シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

"約束の地(カナン)"に赴いた時からだけれど、桜は男装していると…妙に男っぽい行動をすることが多くなったと思う。


桜自身…無意識だとは思うけれど、漂う空気が…ゴスロリ衣装でロリ声であった頃とは大分違い、構え方が男らしくなった。


無意識に…女の口調を避けているように思えるんだ。


男らしさを打ち消すような女装で身構えていた…そんな桜の心境の変化は、いまだ僕には判らないけれど…忠誠心だけは変わらない。


何があっても変わらないということを、僕も判っている。


本音は別にして、命令に逆らえずに流された紫堂警護団のように、揺れる心は桜にはない。


そんな時、桜の身体がぐらりと傾き、


「葉山~、無茶しすぎだって~」


由香ちゃんが桜を支えた。


支えた場所が悪かったらしく、桜の身体が跳ねた。


「あ、ごめん…」


「…桜、休め」


櫂が3人を地面にねじ伏せながら言った。


「いいえ、桜はまだ大丈夫です」


「痛みが完全に表に出ていないだけだ。薬が切れてみろ。地獄だ」


"ジキヨクナール"


あの…胡散臭い名前の風邪薬に何処までの効果があるのかは判らないけれど、蹲っていた桜が…無理をしてでも闘えるまでの回復に至ったのは、僕の結界による治療だけの力ではないことは確かだ。


あの薬…一体何だよ?


何で緋狭さんが…それを持ってた?


僕にはそれがひっかかっていた。


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