シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
緋狭さんも五皇。
意味のない行動はしない。
動くのは、全て"必然"
あの市販薬に…
五皇が…関わっているとでもいうのか?
そんなものに…皇城も関わっていると?
第一、五皇と皇城の接点は何だ?
緋狭さんの…紅皇単独のものなのか?
そして――
本当に風邪の治療薬としてだけに、開発された薬なのか?
此処までの優れた鎮痛効果を、一介の風邪薬がもたらすと?
何で朱貴は、紫茉ちゃんの治療にそれを使う?
頭に色々と謎めいたものばかりが回っている僕の前で、桜が叫んでいた。
「櫂様!!! 痛みの未来を心配しているよりも、桜は今、やらねばならないんです!! 指をくわえてみてなんて居られません!!!」
足手纏いになりたくない。
そんな桜の思いがひしひしと伝わってくる。
僕はどうしていいのか判らなかった。
桜の心も判るし、何があっても櫂を守りたい心も判る。
だけどこんなになるまで桜が耐えていたのは、偏に僕が…皆の足を引っ張っていたのが原因だ。
それに時間がかかりすぎたから。
それを思えば、少しでも耐え抜いた桜を休ませてやりたい。
その頑張りを認めてやりたい。
そんな時、甲高い口笛の音がして。
目の前の敵が一斉に引いた。