シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
何の…合図だ?


場所は丁度東逗子駅を出て、遠くに…海上自衛隊と思われる艦船が停泊しているように見えたから、恐らく横須賀港近くの長浦港付近まで来ていたのだろう。


残りあと1時間を切ったばかりの処だ。


「玲…。気をつけろ。…居る」


櫂が唸るような低い声を出して、右手に緑色の力を纏った。


「……何だ、この瘴気…」


僕も右手に…青色の力を纏った。


瘴気の起点は――

長浦港。


「この瘴気…まるで桜華で、"生ける屍"に囲まれた時のようだ。いや、それより強いか?」


僕の身体は警戒に強張る。


「ああ、お前は…七瀬と潜っていたから判らないな。これは…姿なき敵に襲われた時の瘴気によく似てる。皇城曰く…《妖魔》という、姿が見えぬ化け物らしい」


そう櫂は嘲るように嗤いながら、


「だとしたら…人影の見えないのは道理、か」


その視線の先には、閑散としている港。


その時。


「ねえ…見てよ」


由香ちゃんが震える声を出した。


「何か…こっちに来てないか?」


夜空に輝く光。


これは――



「閃光弾!!!?」



光と共に爆発音。


立て続けにくる。



「気をつけろ!!! 見えぬ相手は…

――自衛隊だ!!! 

海上というより、陸上が応援にでも来て、待ち兼ねていたか」


そんな櫂の声に導かれるように、今度は銃声が聞こえ、僕達は地面に転がり伏せた。


1つ2つのものではない。


幾重にも重なるその音は…マシンガンのような、普通人では決して手に出来るような代物ではなく、

そして激しい銃弾の雨を思えば、敵は集団であることを思わせた。


人影のないその場所に、

確かに…何かが居るんだ。


信じられないけれど。

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