シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
"エディター"の世界に残したままの煌が持っていた、桜の裂岩糸。


そこから離れて桜の元に帰るということは……


「守護石での顕現は、その守護石に馴染んだ石の保持者の"想起(イメージ)"によってなされるもの。それは物理的制約、空間制約を超越して成す事が出来ると、緋狭様より習いました。

ですので、煌が居る"世界"がどうであろうと私が無事な限り、守護石に変わることなく…顕現されたままの形で、煌は持ち込むことが出来ました。

基本私達は、互いの武器を渡すことはしません。あるとすればそれは、不可抗力的で危篤な状況な時で、そんな時がもしあるとすれば…考えられる"危機"に備えて、武器を持ち主に返すという信号(シグナル)を、煌との間に取り決めていました。

想起した武器に他人の強い想起がぶつければ…その武器は惑い、最終的に持ち主に自動的に戻るという…緋狭様からお聞きしていた顕現の特異な習性を利用したものです」

「煌からの信号(シグナル)…それはどんな場合だ?」


僕の問いに、桜は糸を握り締めた。



「煌自身の危機。または…櫂様達の危機の告知」



目の前には、鳴り止まぬ砲弾を抑える櫂がいて。


これは危機には変わらないけれど…


もしも、それ以上の"罠"があったら?


ああ、もしくは。


煌が…戻れなくなっていたら?


僕はぎゅっと拳を握る。


こんな処で結界など、防御に徹している場合じゃない。


もしも煌が。


僕の言葉を守って助けに来た煌が何かあったら。

僕を殺すではなく、櫂と共に"生かせて"くれた煌に何かあったら!!!


くらりとする。


本来なら、逆だった。


あの世界に残留しているのは僕で、煌が現実世界に居れたはずだった。


そして今僕は――

助けに来た煌を、無情に置き去りにしたことで、この場に戻れている。
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