シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
その時――
桜が裂岩糸を網のように放ち、櫂が抑えて居た砲弾を――
切り裂いたんだ。
同時に…停止したように見える、細やかな銃弾は切断され…全ては同時に垂直落下した。
「大丈夫…。やはり裂岩糸は、対銃弾に向いている。砲弾も…大丈夫」
桜の満足気な呟きに、マシンガンの音が上書きする。
「――ちっ!!! しつこいッッ!!!」
櫂が放つ闇の力は、見えぬ敵に襲い掛かる。
それでも鳴り止まぬ銃声。
「玲様!!」
桜は僕の前に立った。
「玲様。桜の右手指は奇跡的にも無事です。左指のように動きが鈍いわけではありません。
桜が…銃弾を受け止めます。こうした広い場所での大量相手の始末は、桜の得意分野です。銃弾による防御は…実戦慣れしています!!!
どうか、玲様は櫂様と由香さんと…横須賀港へ!!!」
「桜、何を!!?」
驚いたような櫂の声。
動揺して振り返った櫂の後ろで、
ドオーーーーンッッ
ドオーーーーンッッ
轟音が妙な緊張を消し飛ばす。
砲弾を抑えようと、櫂は慌てて力を放出して姿勢を前方に戻す。
「玲様。残り1時間をきったんです!!! 煌が私に寄越した裂岩糸…煌の状況がどうであれ、私は煌の為にも此処をお守りしなければなりません。
芹霞さんのことは気になりますが、戻る時間もないのなら…一刻も早くゴールに行き着いて、少しでも早く芹霞さんを奪い返しましょう!!!」
すぐに思考を切り替えられる、桜のほうが雄雄しくて。
僕は――
自分が情けなくなった。