シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「……周涅」


そんな周涅を止めたのは、久涅で。


「これは…お前のものじゃない」


あたし腕を引いて、乱暴に…彼の後ろに放った。


これって…あたしはあんたのものでもないわよ!!!


ひと言物申したくて、真横に並んで久涅に顔を向けてみれば。


まるで櫂の如き威圧感で周涅を凄んでいる最中で。


庇ってくれたような様子に、若干拍子抜けする心地で眺めていたけれど、それに対して感謝したいとか、久涅を見直したとか、そんな感情は全く湧き上がってこなかった。


元はと言えば、久涅の出現のせいだ。


この極悪櫂が、あたし達を窮地に落とした。


それで何?

あたしを庇うようなフリをして、一体何を企んでるの?

あたしを油断させて、どう利用しようとしているの?


もう本当に誰に何を怒っていいのか判らないけれど、とりあえずあたしは…何故か不穏な空気を醸す久涅と笑い転げる周涅双方を睨み付ける。


「何、何~? 久涅ちゃんが、嫉妬? うっそ~ん。女を玩具にしか扱わない久涅ちゃんがどうしちゃったのさ~?」


「うるさい、黙らんと…あの"約束"は破棄するぞ」


「え~今更? ていうか、もう遅いって。あいつが動いたんだから。初めからそういうことで、久涅ちゃんも納得してたでしょ?」


ああ、何でしょこの意味ありげな会話。


「"約束"? "あいつ"? 何!!?」


あたしだけが通じていないという疎外感は、何も此の場で初めて味わうものではないけれど、その単語がいやに気になって。


「ふっふっふ。ひ・み・つ。知りたいなら、芹霞ちゃんの秘密も教えてよ。特にその服の下のひ・み・つ。ぎぶあんどて・い・く」


周涅を――

殴ってやろうかと思った。


…殴れるのなら。


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