シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「……お前は、俺のものだ」
妙に、緊張するような空気が流れる。
だけど――
反吐が出るとは、こういうことを言うのだろう。
何処までこの男…自信満々なんだろう。
第一、久涅なら判っているはずだ。
あたしが最初から、好感度をマイナス以下に低めて嫌っていることは。
そして櫂の為に、そう言ったのであって…あたしの本心じゃないと言うことに。
それくらい、あたしは嫌悪感を顔に浮かべているのだから。
そんなあたしを、"俺の"扱い!!?
極悪櫂は、マゾ!!?
「他に触れるのは許さない」
傲慢。
高飛車。
櫂と同じ顔から吐き出される言葉に、本当に虫酸が走る。
じゃあ櫂だったら?
ぼんやり考えた。
櫂からも、命令系の言葉はよく言われてきたけれど…嫌悪感は抱かない。
何だろう、それが当然のように思うあたしがいて、はいはい判りましたと、苦笑しながら納得するあたしがいるから。
久涅は嫌だけど、櫂ならいいんだろうか?
――芹霞ちゃあああん!!
昔から、櫂はあたしのもので。
あたしは、櫂のものだったから。
何1つ…抵抗はないんだ。
「お前……何を考えてる?」
ぎらぎらとした睥睨した眼差し向けられて、再び掴まれた腕。
ぎりぎりと締め上げられ、思わず声を上げた。
「ははは~。青春だね~。遅咲か~。判らないでもないから判ってあげるよ~。隣の部屋…勝手に使っていいからね」
周涅が指差した方向を一瞥した久涅は、
「気の強い女は、組み伏せるのが一番だ」
そうにやりと言うと…あたしの腕を掴んだまま、ずるずると移動したんだ。
周涅が指差した、隣の部屋に。