シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「……ハァ…ハァッ、
よかった…間に合って…」
「玲様!!!」
玲様が、青白い顔に微笑みを作って立っていた。
その手には青光。
玲様の…電気の力。
効いたんだ、玲様の力は。
ああ。
玲様がいるなら、櫂様は大丈夫だ。
だから私は――
テディベアの目である黒曜石を顕現させた裂岩糸を、建物の屋上目がけて投げ上げた。
元凶たる存在を消し去る為に。
眼球を抉る相手は不可視なれど、それを操っているのだろう相手が可視である限り、私に攻撃出来ないはずはない。
緋狭様との鍛錬により、より自在に伸縮出来るようになった裂岩糸は、屋上に垂直に伸びる電線に絡みつくことに成功し、糸を縮めると同時に、自然の原理で私は急速度に高く跳ね上がった。
「馬鹿、桜!!! 1人で動くな、俺も連れろ!!!」
慌てた馬鹿蜜柑の声に、仕方が無く片手を伸ばして煌の手を引っ張り上げながら、私達は猛速度で上昇する。
悍しい…瘴気が次第に近付く。
心ならずも…恐怖にも似た戦慄に胸が騒ぎ、ひゅうと喉を鳴らした。
はっきりと――
大きく見えてくる。
黄色い外套。
青白い仮面。
その力は未知数なれど、芹霞さんに手出ししようとした、己の愚かさを悔いるがいい。